「何か面白いものはあるかしらー?」  僕にとって至福の時、それは新たな商品を仕入れてきて、それらの品定めをしている時である。  僕の能力を持ってすれば、それの名前と用途はすぐに解る。  だがそれだけではつまらない。敢えてじっくり眺め、そこにある汚れや細かな傷などを吟味する事で、その道具がどんなふうに使われ、そして想われたのか、人間でいうなら人生というべきものへ想いを馳せるのだ。 「…………はぁ」 「……何よいきなり人の顔を見て溜息なんて失礼ねェ」  そりゃあ、その至福の時を突然の来客で邪魔されれば溜息の一つも出るさ。  とはいえ、此処は店であり別に今も閉めていた訳ではないのだから、誰かが訪れても別におかしな事ではない。  ……そもそも、閉めていた所で此処を訪れる連中にそんなのを気にするような奴はほぼ皆無だろうが。 「別に、何でもないさ。……それで? 今日は一体何の用だい天子?」  僕が内心で面倒臭がっているのを感じ取ったのか、彼女は小さく唇を尖らせて不満そうにするも、しかしそれはすぐに何時もの快活そうな笑みへと変わる。 「さっき言ったでしょう? 『面白いものはある?』って。お店に商品を見る以外の何を目的に来るっていうのよ?」 「お店、ね……生憎そう認識して此処に来る奴は少なくてな」  自分で言ってて少し悲しくなるが、しかし事実なので仕方ない。  うちの常連と言えるような奴らの殆どは、茶を呑む場所程度の認識しかないのだろう。 「それは酷い話ねェ」  けらけらと彼女は笑ってみせるが、しかし普段は割と彼女もそっち側である。  今日も商品を見る、とは言っているもののどうせ買って行く事はないのだろう。  そんな思いもなくはないが、しかし折角来たのだ。  騒いだり商品を壊したりでもしない限りは歓迎してやるとしよう。うん。