僕は一人でいるのが好きだ。  だがそれは何故かと問われたとしたら、僕は俯き「考えたこともなかった」と答えることだろう。  それほど一人でいることが自然だと思っているし、またそれは周知の事実だった。  だから僕は店を構えているというのに、滅多に勘定台には座らない。  それよりも居間の定位置に陣取って読書している方が何倍、いや何十倍も多いことだろう。  商売人としてはどうかと思えるだろうが、僕――森近霖之助としては、それでいいのだ。  読書も、商売も、その生も、どれもどこか道楽染みている方が、僕らしくていい。 「――と、僕は思っているのだけど」  珍しく勘定台に座りながら、珍しくまくし立てるように呟いてみたものの、それは店内に響いただけで、返答はなかった。  僕は独白のつもりはなかったのだけど。 「……なんか言った?」 「私は何も」 「そっか」  何故その会話に僕が介在しないのだろうか。甚だ疑問を覚える。  狭い店内には、これまた珍しく人がいた。  それも二人だ。が、その二人が互いに「幻聴ね」「幻聴だわ」なんて言い合っているのだから、流石に少々気分がよろしくない。  それも店主そっちのけで商品を手に取っては「これじゃない」「あれじゃない」なんて走り回っているのだから、尚更のことだ。  僕は溜息をつきながら、二人に話しかけることにした。 「霊夢、魔理沙……僕の言葉、という発想はないのかな?」 「なかったわ」 「なかったね」  せめて目を見て言って欲しい。  霊夢と魔理沙が冷やかしにくるのは日常茶飯事のことだが、いつもは勝手にお茶を飲んだり、図々しい頼みごとをしてきたり、些末な雑談を持ってきたり、ロクに許可も取らずに商品を持ちだしたりするくらいだ。  今回のように店中を走り回り、商品という商品を引っ繰り返す騒ぎはあまり記憶にない。  流石に心配になって勘定台まで出てきたが、どうやら用があるのは商品だけで、僕にはないようだった。 「……せめて理由さえ言ってくれれば、僕も安心して読書に勤しめるんだけどね」  やれやれ、と不安を払うかのようにかぶりを振り、ごちた。ずっと片手に本を持っているものの、僕の頭には一文字すら入ってこない。  何事も中途半端で、腹部にぬらりと気持ち悪さが滑った。  ようやくその行為が無駄だと気づいた僕は、手にしていた本を閉じ、勘定台の上に置いた。  そして深く座り直すと、焦点を合わさずに辺りを眺めることにする。  未だに二人が何を探しているのかはわからないが、それでも同じ無駄な時間でも、先程までよりは多少マシな時間のように感じられた。  僕のように能力もなく長く生きられる存在にとって、このような無駄な時間は逆に新鮮に思える。  ぼーっとしていて、気づけば何日も経っていたなんてことはザラだ。  それに比べれば面倒臭くとも、このように賑やかな時間を過ごす方が人間的ではないか、と僕は思う。 「――それでも面倒に感じるのは、性格なんだろうな」  それは自他ともに認める悪癖に違いない。  今の状況も嫌になるが、それ以上に自分の性格が恨めしく思えてならなかった。 「あのー……」