レミリア・スカーレットは我儘であり暇人である。それは何回か店に訪問してきたことで理解したことだ。  メイド長やレミリアの友人もたまにだが愚痴を零しにくる。なぜ、零す相手が僕なのかは甚だ疑問なのだが……。  今日もレミリアは暇を潰しに店に訪れていた。 「今日は、面白いことを思いついたのよ」  そう言うとレミリアは口をにやりと歪ませる。こういうときは大抵何かしら悪い予感しかしない。 「勝負をしましょう? 勝ったほうが負けたほうの言うことを聞くというのはどうかしら?」 「それは僕が勝てる見込みのある勝負なのかな?」 「あら、私だって無敗ってわけじゃないのよ。勝てる可能性は無きしもあらずと言ったところかしら」  それは勝てる可能性が限りなく低いということじゃないか……。 「で、勝負の内容は?」  レミリアは待っていましたと言わんばかりに服のポケットからあるものを取り出した。 「トランプ?」  見た限りではトランプという名前しか見えないし、用途も娯楽としか見えない。特に何かありそうもない普通のトランプのようだ。 「ブラックジャックで勝負しましょう?」  ブラックジャックとはトランプを使うゲームだ。最初、二枚のカードを引き手札を21に近付けるというルールとしては簡単だ。だがこれはかけ引きが大事であり、如何に相手を降ろさせるなどのやり取りも重要になってくる。  目の前にいる少女レミリアは、メイド長である咲夜の話では賭け事には滅法強く負けを知らないと言うほどの運と実力を持っているらしい。  対する僕は賭け事には滅法弱い。魔理沙によく勝負を持ちかけられたりするのだが、勝った試しがなく、賭け事には弱いと自負はしている。自分でいうのもなんだけど負けず嫌いな為、勝てないと思っていても勝負と聞かれると勝負したくなってしまうのだ。  しかし、ブラックジャックか。苦い思い出しかないのだが……。 そう、魔理沙との勝負もブラックジャックでやっていたので全敗している僕としてはこのゲームで勝負というのは、少し……いや、やりたくないレベルのものだ。 魔理沙曰く、簡単なルールのほうが勝負もつけやすいとのこと。 「どうかしたかしら? 店主」 「いや、なんでもないよ。早速始めようか」 「そうね。時間をかけるのは私の性に合わないし」  レミリアからトランプを受け取り、箱から中身を抜き取る。そして、絵柄などを軽く見てからカードをシャッフルさせる。 「中々に様になっているのね。意外だわ」 「それは嬉しいね。賭け事得意そうな君からそう言われると」  レミリアはふふふと笑う。彼女の笑った顔は店に来てからそうは見ないため新鮮だ。大体は従者である咲夜と一緒に店に来るのだが、基本彼女は笑わずわがまま……いや無理な注文に近いものをしてくる。あくまでも近いというだけで叶えられないわけではないのだが、どうしてそんな注文をしてくるのかは不明だ。 「さて、切り終えたよ。ルールはどうするんだい?」 「勝負は五回戦。先に三回勝ったほうが勝ち。簡単でしょ?」 「なるほど、分かったよ」  親決めのコイントスで親はレミリアと決まった。  親は17になるまでは引き続けなければならない。それに対し子はいくらでもカードを引くことは出来るが、21を超えてしまうとバースト。つまりは負けということになる。自分の数字を見極めながらカードを引くことが大事だということだ。 「それじゃ始めましょうか」