夕焼けが見え始めてきた頃だっただろうか。
私は一人教室の窓から楽しそうに野球をしている人たちを見ている。
見ているとほんとに楽しそうにやっている。
皆が笑顔でミスをしても笑ってやれるそんな集団。

名前はたしか……
リトルバスターズだったはずだ。

 

リトルバスターズはとても楽しそうにいつも遊んでいる。
一つ上の先輩を筆頭にほとんど同じクラスの子で組まれている。
……まあ私自体は人気が高い(らしい)のである程度は交流があるが、
なぜか話す内容が話している人とかけ離れているらしい。
ゆえに付けられた名前が『天然ボケスナイパー』らしい。

どうしてその名前が付けられたのか気になった私は誰かに相談してみることにした。

「直枝君」
「どうしたの? 朱鷺戸さん」
笑って、こちらを振り向く。
中性的な顔立ちから女子の間では女装させたらNo,1と呼ばれるくらいのなんとも不名誉な称号を持っている不幸な少年。
「私っておかしい?」
「え……?」
笑いが固まった。
というか教室の空気自体が固くなる。
「ど、どうゆうこと? 質問の意味がよく分からないんだけど……」
慌てて聞き返してくるのでもう一回言った。
「私っておかしい?」
「……」
完璧固まってしまった。
多分教室にいる半分の人は固まっているに違いない。

「それには私が答えよう。沙耶君」
固まった直枝君を置いて来ヶ谷さんが変わりに答えてくれるらしい。
「では何でしょうか?」
「君はおかしくない。ただ天然なジゴロが入りすぎているだけだよ。沙耶君」
ぽんと肩に手を置いて慰めのポーズをとる。
「どこが天然なジゴロなんでしょうか」
「そこだよ」
びっと指で私に指摘をする来ヶ谷さん。
「沙耶君は人に質問をしているようだがそれがもう天然なのだよ」
「?」
言っている意味が分からなかった。
「天然は天然らしくもっとその天然を発揮すればいいさ」
どうやら結論は今のままでいればいいと言うことだろうか。
と勝手に解釈をしてしまったがこれでいいのだろうか。
「それは君次第だ。沙耶君」
「え?」
声に発してないのにまたまた指摘をされる。
「君は十分可愛いんだ。もっと自分に自信を持ちたまえ」
「は、はぁ……」
納得はしたがなぜか胸にはくっと引っかかるものがある。
「では………」
来ヶ谷さんは満足そうに去っていった。
結局分からずに終わってしまった。

「朱鷺戸さん」
不意に声をかけられた。
どうやら元に戻った直枝君がこちらに話し掛けてきた。
「なに?」
「朱鷺戸さんは可愛いからさ。自信もちなよ? 相談があれば何でも乗るしね。あ、でも恋の相談はだめかな」
あははと笑いながら話す彼はいつもとは違う彼だ。
しかしそんなこと面と向かって言われたのは初めてだったため少し恥ずかしくなる。
「あ、ありがとう……」
声は小さかったが彼には聞こえたらしい。
直枝君の顔を今直視出来ない。
それほどまでに恥ずかしい言葉を言われたのだ。
これこそ天然と言わざるえないだろう。
「じゃあ、僕、恭介達と野球やってくるから」
教室から出て行こうとする。
「ま、待ってっ!」
知らぬ間に引き止めていた。
「どうしたの?」
「あの……その……」
言葉が思いつかない。
直枝君を引き止めるためにはどうすればいい。
頭を回転させてもいい案は思い浮かばない。
結局私はこうしかいえなかった。

「野球……頑張ってね」
私の馬鹿〜。
なんでこんなことしか言えなかったんだろうと後悔した。
でも直枝君は笑顔でこういってくれた。
『ありがとう』
と。
それだけで私は嬉しくなる。
そうしてまたグラウンドで野球をしているリトルバスターズを見る。

明日もいい日でありますように……

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