最近小毬ちゃんの様子がおかしい。

落ち込んでいたのかと思うと次の日にはご機嫌だったりとか。
休みの日には絶対というほどおしゃれをしてどこかへと出かけていく。
そのすがたをあたしは見ることしか出来なかった。

ある日小毬ちゃんが毎日付けている日記を発見してしまった。
覗いてはいけないとは分かっているがなんて書いているのか気になって仕方がない。
今は休みの日だ。
小毬ちゃんは例のごとくどこかへと出かけている。

……これはルームメイトとして見るだけだ。
好奇心には勝てないってやつだな。
ぺらりとページをめくる。
そこには可愛らしい文字で日記が書いてあった。
そこに書いてある名前にあたしは驚愕をしてしまう。


――明日は恭介さんとデート♪
水族館に行くって言ってたから今から楽しみ
早く明日にならないかなぁ?――

きょーすけ!?+
小毬ちゃんの様子がおかしかったのはきょーすけのせいなのかっ!?
続きが気になる。
見てみよう……。

――今日はとても楽しかったよ〜。
でも明日からまた学校に行くのかと思うと残念になる。
それは恭介さんとあまり会えないから…。
でもリトルバスターズの活動は楽しいからいいや。
明日も楽しい一日でありますように――

む、きょーすけめ。小毬ちゃんを手懐けるとはやるな……。
ではないっ!
小毬ちゃんどうしてあたしじゃないんだっ。
あたしだって小毬ちゃんと水族館行きたいぞ。
次のページもあるな。
見てみるか……。

――今日はリトルバスターズでかくれんぼをしたよ〜。
恭介さんと同じチームだったから同じ場所に隠れて楽しいことしちゃった♪
ふふ、恭介さんって結構ウブなんだなぁって分かった日だった――

たしかにかくれんぼをしていたときあたしは違うチームだったな。
くっ……たしかあの日は来ヶ谷に手駒にされてされるがままにされていたな。
……やなこと思い出した。
次だ次っ!

――最近誰かにつけられている気がする。
私の歩幅に合わせて歩くものだから気になって仕方ない。
そのことを恭介さんにも相談しようっと……――

ん? これよくみたら今日の日付じゃないか。
ということは今きょーすけと小毬ちゃんは一緒に居ると言う事か。
……そんなことはさせんっ!
でもどこに行ったのか分からないから動こうにも動けんな。
誰かに相談をしてみるか。

「で、それで僕のところに来たと」
「そういうことだ」
理樹に相談をしたところ理樹にも分からないらしい。
「うーん、まず小毬さんと恭介が付き合っていたってこと自体が不思議かな?」
「たしかにな……」
そこが一番の疑問になっているところだ。

「直接聞いてみようか」
「それが一番早いか……」
結局本人に聞くということできょーすけの部屋に理樹と一緒に行く。

「恭介いる?」
理樹の言葉に反応して部屋内が騒がしくなる。
中で二つの声がする。
一人はきょーすけだろう。
もう一人はルームメイトか?
それにしては声が高すぎるし、女か?
……もしかして。

返事を行く前にあたしはドアノブに手をかけて部屋に入る。
「ちょ、ちょっと鈴!」
理樹の静止の声が聞こえたがあたしは歩みを止めなかった。

「あ……」
見られたと言わんばかりに情けない声を出すきょーすけ。
案の定中にいたのはきょーすけと小毬ちゃんだった。
しかも小毬ちゃんの服装は乱れていてパンツが丸見えだった。

「な、な、な……」
「り、鈴!? これは、だなぁ……」
聞く耳もたんっ!
「変態兄貴っ! 行こう、小毬ちゃん」
ぎゅっと小毬ちゃんの手を握る。
「……」
しかし手は振り払われた。
「こ、小毬ちゃん?」
「ごめんね鈴ちゃん……」
なんで謝られたのか分からない。

「私は鈴ちゃんのことも好き……だけど恭介さんのほうがもっと好き!」
「っ……」
一番聞きたくない言葉だった。
「だからごめんね。鈴ちゃん……」
そう言う小毬ちゃんの目には涙が流れていた。
これじゃあたしがわるもんみたいじゃないか。
……仕方ない。腹を括るか。

「きょーすけ」
「な、なんだよ」
変態と呼ばれたのがショックだったのか少し声のトーンが低い。
「小毬ちゃんを泣かせたら承知しないからなっ」
それが精一杯の言葉だった。

「ああ、分かった。もう絶対に泣かせたりしない」
「兄妹の約束だからな」
「ああ!」

踏ん切りがついたわけではない。
でも少しすっきりはした。

明日からも小毬ちゃんとはいい友達でいよう。


そして二人に幸あらんことを……

 

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