今日もいつものように理樹君の射撃の練習をさせていたときだった。
「沙耶さん」
不意に理樹君が銃を下ろして、笑顔でこんなことを言ってきた。
「今からファミマに行こう」
「……はぁ!?」
意味が分からない。
いきなり話しかけてきたと思ったらファミマに行こうだなんて、訳が分からない。
「で、どうしてファミマなの?」
一応理由が聞きたかったので聞いてみることにした。
理樹君はきらっと白い歯を見せて、
「そこにファミマがあるからさ」
と笑って言う。
…やっぱり人選間違えたかしら。
こんなにも馬鹿だったとは知らなかったわ。

 

次の日
「沙耶さん」
「何? 理樹君」
今日もいつものように練習というか昨日は理樹君が時間ギリギリまでファミマに居るから、精神的に疲れたため探索は中止にした。
ずっと、理樹君うろうろしてるんだもん。
なんか、こっちのほうが恥ずかしかったわよ。
店の人はなんかじっとこっちを睨んでたし。
今日こそは、どこにも行かないと決めた。

「ローソンに行こう」
「…はい?」
脈略のない話についていけない。
「ローソン、ファミマは男の憧れさ」
そんな話聞いたこともない。
「それじゃ、セブイレやマルケーじゃだめなの?」
ファミマとローソンが男の憧れだとすると、この二つはなんだろうと思い聞いてみることにした。
「邪道だね」
一言で切り捨てる理樹君。
「なんで?」
「僕がそう思ったからさ」
な、なんて理不尽な理由なの。
自分勝手にもほどがあると思う。

………
結局、連れられるまま昨日はローソンに入り浸った。
やはり、ここでも店の人に睨まれた。
うう、これから来づらくなったわね。
ファミマとローソンに。


で、例のごとく昨日も探索が出来なかった。
理由は昨日と同じ。
ああ、いつになったら探索終わるのかしら。

ためしに、セブイレに連れ行ってみた。
5分もかからず店を出た。
その後、嘔吐をする理樹君。
訳が分からない。
体調の優れない理樹君をファミマに連れて行ってみる。
すぐ元気に。
まったく、現金な人だと思う。
で、そのまま入り浸り。

 

「今日はさ、沙耶さんと行きたい場所があるんだ」
「え?」
なんか嬉しく思える。

「で、ここは?」
「見て分からない?」
いや、まるっきりコンビニなんっすけど。
しかも、ファミマ、前と同じ場所。
ああ、また睨まれてる。

「ねえ、理樹君」
「何? 沙耶さん」
「くたばれーーーっ!!」
ごすっ
あたしの蹴りが理樹君に…当たらなかった。
「甘いなぁ。沙耶さん」
くすくすと笑ってあたしの後ろにいつのまにかいるし!

ごほんっ!
大きく店の人が咳払いをする。
「どうやら、決着はあそこでやるしかないよだね」
「そのようね」
逃げるように店を出て、練習場に行くあたしたち。

「さぁ、やろうか」
「ええ、殺す気でいくから」
その言葉で、バトルが始まった。

あたしは銃で理樹君を狙って打つ。
しかし、理樹君はなんなくそれをかわす。
くっ、なんか悔しいわね。
「ほらほら、標準が甘いんじゃない?」
その言葉にあたしはカチンと来た。
もう一つ、拳銃を出して、二挺で構える。

「じゃあ、僕も少し本気を出すかな」
タン…タン…とステップを刻みだす。
「いっけぇーーっ!!」
二挺で間髪いれず素早くトリガーを引く。
理樹君はステップで華麗に交わす。
「うそでしょ!?」
「これが今の沙耶さんの実力さ」
あーっはっはっはと笑いのける理樹君。
息も切らしてない。
あの体にどんだけの体力があるってのよ。

「はい、終わり」
いつの間にか後ろに回られて手を押さえられる。
「…あたしの負けね」

「じゃあ、罰ゲーム。これでジュース買ってきて」
はい、と500円玉を渡される。
「あ、場所はファミマね」

あたしは、そのままセブイレでジュースを買って理樹君に飲ませてみた。
見事、吐いた。
「第二ラウンドやる気?」
「ええ、もちろん」

こうして、無駄に時間だけ過ぎていくのであった。

 

「あいつら、おせえなぁ…」
そのころ、時風は暇そうにスクレボを読んでいたとさ。
 

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