「おーし、皆揃ってるな」
教室を軽く見渡す。
いつものメンバーと二木、笹瀬川の姿がある。

「今日はツイスターでもやろうぜ」
………
一同が黙る。

「それって筋肉いるのか?」
「ああ、足の筋肉、腕の筋肉がないと耐えられない難しいゲームだ」
真人の疑問に軽く答えておく。
これで真人はこっちのもんだ。
「お、それならやるしかねーな」
「ああ、なら俺も本気でやるか」
真人と同時に謙吾もやる気が出てきたらしい。
……あとは理樹だな。
「うーん、別にやってもいいんだけど、小毬さんたちが納得するかな?」
たしかにそれは問題だな。
これは足とか使うからスカートだとあれだよな。
しかし、女性陣がやらないとなると男だけのむさいゲームになってしまう。
それだとつまらない。

で、俺は女性陣のほうを見てみる。
「よーし、頑張るぞー」
「でも、やりかた分かんないですー」
「なあに、クドリャフカ君。私が手取り足取り教えてあげよう」
「姉御! その目はやばいっすヨ」
「あんまり得意ではないのですが」
「ツイスターってなんだ? おいしいのか?」
「おーっほっほっほ。そんなことも知らないのね。棗鈴。ではこの勝負私が貰いましたわね」
「ふぅ、葉留佳に呼ばれて来てみればツイスターとはね。不愉快だわ」

乗り気なもの、乗り気じゃないものさまざまな反応があった。
「これで勝ったやつにはこれをやろう」
ぴっと俺は二枚の紙を出す。
「恭介。それチケット?」
「ああ、映画のチケットさ。勝者にはこれを贈呈しようと思う。これで好きなやつとデートでもしてこいよ」
俺の言葉を言い終えると同時に女性陣の目がぎらりと光った気がした。

「よし、皆のやる気が出てきたところでさっそくやろうぜ」
「審判はどうするのさ」
「俺がやってやるから理樹もやれよ」
「えー、僕もやるの?」
嫌そうな顔をする理樹。
「なんだ理樹君。お姉さんとやるのはいやなのかな?」
「そ、そういうわけじゃないよ。恭介だけやらないなんてずるいと思っただけだよ」
「ふむ、たしかに。恭介氏。今回は怪我をしている謙吾少年を審判にするべきだと思うんだが……」
謙吾は左腕を怪我している。
片腕ハンデは厳しいだろうというか片腕使えなくてやれるはずがない。
「いたし方あるまい。今回は我慢しよう」
謙吾も納得してくれたのでさっそく始めることにした。

「右手赤」
謙吾の声が聞こえる。
俺は赤を探して、そこに手を置く。
「ちょっと棗先輩。どこ触ってるんですか!」
「仕方ないだろ? こうしないと俺が倒れるんだ」
「はっはっは、二人ともだらしないぞ」
「ゆいちゃん、当たってるよー」
「ぶはっ……だからゆいちゃんはやめろと……」
俺、小毬、二木、来ヶ谷の四人でバトルしていた。

「次は左足緑」
謙吾は淡々と出た色を言う。
「くぅ……」
二木が苦しそうに左足を伸ばしている。
俺は二木の足が伸びているところに足を置いた。
「っ……卑怯ですよ」
「早いもんがちだよ」
二木はこっちを睨みつけながらほかの場所に足を置いていた。

「次、右足青」
「わわわ……」
小毬の姿勢が崩れる。
そしてそのままこちらへ向かっている。
どしーん……。

俺の上には小毬が乗っかっている。
「大丈夫か? 小毬」
「う、うん。ごめんね。恭介さん」
結局来ヶ谷の勝利で1ゲームが終了した。

「理樹。そんなとこ触るな!」
「えー、いいじゃない。減るもんじゃないし」
「ちょっとこちらにも触れないで下さる?」
「細かいことは気にしないで」
「あちし、空気……」
理樹、鈴、笹瀬川、西園の四人だ。
そして理樹が変態行為をしている。
鈴のお尻を器用に触っている。
同時に足で笹瀬川の体にも触れている。
西園は完璧空気だった。

2ゲーム目は理樹の勝利で終わった。

「わふー、真人いやらしいですー」
「ひんぬーに手を出すとは真人君もすみにおけませんなぁ」
「うっせ! こうしないと俺が負けるからだろ?」
真人は能美と三枝にもみくちゃされつつもしていた。

「うおおおおおお!!」
どすんと真人の大きな巨体が姿勢を崩して倒れる。
能美と三枝を巻き込んで……。
「わ、わふー。重いですー」
「こんな役回りやだー!」
真人は気絶中……。
俺と謙吾で上に乗っている真人をどかしてやる。
「た、助かりましたー」
「まったくですヨ。あー、重かった」
二人は安堵して、次のゲームが始まった。

「わふー、届きませんっ!」
能美は小さい体で踏ん張っている。
「そこ、もらいです」
西園は鈴の取ろうとしていたところを取る。
「ふかぁーーー!!」
鈴は吼えるも西園には効果がなかった。
「……」
俺はその間めちゃくちゃおいしいポジションにいた。
「馬鹿兄貴そこどけ」
「無理。これルールだし」
そう、ツイスターのルールのひとつである、場所は自分で見つけて人の邪魔にならないよう動かなくてはならない。
「恭介さん。そこにいられると私が危ないのですが……」
「そんなことをいわれてもなぁ……」
西園に言われるも俺は俺でいっぱいいっぱいだ。
「わふー! これはピンチですー」
能美が一人パニクっていた。


4、5ゲーム目と続いていって、勝ったのは以外にも能美だった。
なんで勝ったのかは誰も知らない。

「で、誰誘うんだ?」
真人が能美を見る。
能美は恥ずかしそうな顔(実際恥ずかしいのだろう)をしていた。
そして、小さくこう呟いていた。
「で、では真人一緒に行ってくれますか?」
「あ? 俺か。別にいいけどよ」
周りは、驚いている者、ああ、そうだったかと思っている者さまざまだった。

「じゃあ、次の日曜日で」
「おう、分かった」

どうやらデートの日にちも決まったらしい。
ふっ、それを見逃す俺じゃない。
次のミッションは決まったな。

「じゃあ、今日はこれで終わりな」
俺の言葉で皆解散していく。
一人除いて……。

「恭介さん。次のミッション、クーちゃんたちの尾行って考えてる?」
「ああ」
頷く。
「そっか……。じゃあ恭介さんさえ良ければなんですが……」

―私たちもデートしませんか?

耳元でそう言われた。

 

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