「恭介さん。ヘンゼルとグレーテルの話って知ってますか?」
小毬が急に話し出す。
「ああ、あれだろ? 二人で道を歩いていたら迷ったってやつだろ?」
「はい、それで今の私たちの状況は……?」
一瞬の沈黙。
「すまん、小毬……」
「え? べ、別に恭介さんのせいじゃないですよ」
「いや俺のせいだ。俺がこっちのほうが近道と言ったから……」
「そんなに自分を攻めないで下さい。私だって恭介さんと二人きりで嬉しいんですから」
小毬は笑顔でにっこりと言ってくれる。
「そっか、そうだよな。まずは皆を探そうぜ」
「はい!」
あ、ちなみに俺と小毬付き合ってるからということにしといてくれ。


こんな状況になったのは30分前。
リトバスメンバーで山に登ろうということになった。
事の発端は珍しく理樹だった。
「なんか、急に山に行きたくなっちゃったよ」
雑誌を見ていた理樹が不意に顔を上げて皆に言う。
「い、いきなりどうしたんだ? 理樹君」
「これだよ」
理樹が雑誌を皆に見せる。
「ハイキングなのです〜」
そう、理樹の見ていた雑誌の中にでかでかとハイキングと言う文字があった。
「今は夏だ――」
「だからだよ」
謙吾の言葉に理樹が言葉を遮る。
「皆でハイキングして、女の子たちの汗で服が透けて……いやっほ〜〜〜〜〜な気分になりたくない?」
いや、そこまでは……。
というか理樹がおかしい。
「理樹君。大丈夫か? 頭のネジが抜けていないだろうな」
来ヶ谷が心配そうに理樹を見ている。
「いたって正常さ。なんたって僕は自分の欲望に忠実だからね」
「いやいやいやそれでは困るんだが……」
「大丈夫。僕はくる……いや唯湖のこともそういうふうに見てるから」
だめだろ、そりゃ……。
「り、理樹君……」
来ヶ谷も満更ではないといった顔をしてしまっている。
「リキエロいですっ」
「クドも、葉留佳も、美魚も鈴ももそういう対象だから」
ぐっと親指を立てる。
り、理樹が壊れちまった。
「じゃあ、ハイキングに行きましょう」
「じゃ、あたしも準備してこよっと」
「頑張りましょう」
「まあ、たまにはいいか」
女は皆賛成し、行くこととなった。

そして、山を登っている最中、俺は抜け道っぽいものを発見した。
小毬にそれを話すと二人で行きましょ〜みたいな感じになって……。

「そして、こんな状況になったのであった」
「ふえ? 誰に話し掛けてるの? 恭介さん」
「あ、いや俺の独り言だ。気にしないでくれ」
「あ、うん。分かったよ〜」
俺たちは来た道を戻ろうとするも、そこは山。
方角など分からなくなっており、俺たちは迷子になっていた。

ポツポツ……
しまいには雨まで降ってきやがった。
「ふぇ〜〜〜〜」
「小毬こっちだ!」
焦っている小毬の手を掴み俺たちはある洞窟へと避難することが出来た。
「ふいー、ここにいればなんとか雨は凌げるだろう」
「そ、そうですね」
小毬の様子がおかしかった。
「どうした?」
「手……」
「手? ……す、すまん!」
慌てて手を離す。
温かかった温もりがなくなって少し寂しい感じだ。
「くしゅん」
小毬がくしゃみをしたので状況を思い出す。
「タオル使えよ」
鞄の中のタオルを渡してやる。
小毬はお礼を言ってタオルを使う。
しかし、小毬の服が濡れてるせいかなんかエロかった。
理樹じゃないがこれはこれで危ない感じだった。
俺は理性を押さえれるのか?
「恭介さんも拭いたほうがいいですよ」
「あ、ああ」
小毬から自分のタオルを受け取り俺も軽く拭く。
って考えたらこれ小毬が使ったんだよな。
やばい、なんか小毬を見れない。

「恭介さ〜ん。こっち来て話しながら待ちましょ〜」
「ああ、すぐ行く」


俺は今小毬と二人きり……。
やばいなぁ……悶々してきた。
「きょう……すけ……さん」
「恭介さん!」
「うおっ、ど、どうした? 小毬」
急に話し掛けられびっくりして最後らへん裏声になっちまった。
「もう、話してるのにぼーっとしてるんだもん。私怒っちゃうよ? プンプン」
怒っているが本気で怒っていないのは分かっている。
相変わらず服はびしょびしょだ、気持ち悪いったらありゃしない。
小毬も濡れているため、少し寒そうに思えた。

「おし、小毬今から暖まろうぜ」
「? どうやってですか」
「そりゃ……にゃんにゃんしてだな……」
「わ、恭介さん。エロいよ〜」
「いや、小毬がいいのならな」
「う、うん。いいよ」

そして、俺たちはにゃんにゃんして一つになった。


そして、にゃんにゃん後理樹たちとなんとか合流できた。
「ん? コマリマックス。なにか匂いがするのだが……」
「ホントですね。恭介さんとお楽しみなことでもやったんですか?」
と、からかわれている小毬の姿があったとさ。

 

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